君にプレゼント。




「 君 に プ レ ゼ ン ト 。 」












「だから、俺のジャージをマフラー代わりにするのはやめろ」

「首にこう、丁度良いのが他に無かったんだよ。仕方ない」

目を離した隙に、行天が再びジャージを首に巻いて出かけようとしていたので、慌てて服の裾を掴み引き留めると、 制止する多田の手から、マフラー代わりのジャージを守りながら特に悪びれた様子も無くさらりと言った。

寒さに自然と肩を竦め、何度も洗濯を繰り返してくたくたになったジャージに唇を擦りつける。

「何処へ行くつもりだ」

「ちょっと、煙草を買いに自販機まで」

行天の数少ない荷物のうちの一つ、出会ったときにも着ていた黒いコートを羽織り、 その上から適当にジャージを巻いたなんとも怪しげな格好で、よくもまあ、出歩けるもんだ。

呆れたように溜息を吐く。
いい加減ジャージを回収しようと伸ばした手は、振り返った行天に掴まれあっという間に唇を重ねられた。
ちゅく。名残惜しむように軽く吸われた唇を、多田がぱくぱく開閉させる。

油断した隙に行天は多田の手をすり抜け、ドアノブに手をかけて。

「メリ−、クリスマス。プレゼント楽しみにしてて」



不意打ちに言葉の出て来ない多田に小さく笑うと、行天はジャージを首に巻いたまま足軽に外へと一歩踏み出した。