「っあ、い、いてぇ、いてぇってば…!!」

「っら…らって…!」

「しゃ、喋るなよぉ!今絶対歯当たった、俺のチンコ使い物になんなくなっちまうだろー…ッ」

ファブレ邸の一室で、息も絶え絶えのガイが、自分の下肢に顔を埋めるルークの髪をぐいぐいと引っ張っていた。
使用人の分際で主人にそんな口聞いていいのかなんてそんな事今は知ったこっちゃ無い。
男にとって一番の急所であるそこが窮地に晒されているのだ。これで冷静な方がきっと絶対可笑しいに違いない。

「あ、が…っ!」

ガクガクと身体が震え、緊張というか嫌な予感というか、なんとも言えない恐怖感にじわじわと涙が出てくる。
何でこんなことに、いや、っていうかそんな事よりほんと助けて下さい誰でもいいから、ああ、神様!!





「ああ、神様…。(出来ることなら今すぐ俺を助けて下さい)」












「い、いて、が、ガイ…ッ、そんな髪引っ張るなってば…っ」

「ならさっさと離してくれよ、ほんっとお前下手くそなんだよ…!!」

心底の訴えに、不満そうに唸ったルークが「そこまで言うことないだろ」と泣きそうになりながらガイのペニスを握る手に力を込めた。

いて、いててて!

思わず声をあげかけるが、すんでの所でそれを喉奥に押し込み、ゴクンと唾液を飲み込んで誤魔化す。
普通の男ならとうに大声をあげているだろうが、ガイは色々な意味で我慢強かったのでどうにか堪えることに成功していた。

大体深夜にルークの寝室に上がりこんでいることも問題なのに、こんな事までしているなんてファブレ公爵に知れたら、ガイはクビだけでは済まないだろう。 下手をすれば違う意味で首が飛ぶ。それだけは勘弁して欲しい。

「も、もっと優しく…してくれよ…ぉ」

見っとも無く懇願して見せたガイに、ゴクリ、と唾液を嚥下したルークの喉がゆっくりと上下に動いた。

「なんか、ガイ…。すげぇ、可愛いんだけど…」

酷く興奮した面持ちで、ルークがぺたぺたとガイの尻を触っている。

ああ、逆効果…。

思わずポツリと吐いたガイだったが、良くも悪くもルークには聞こえなかったらしい。
むしろ恍惚とした表情を浮かべ、自分の髪を引っ張るガイの手を掴み、力任せに口付けた。
少しばかり前屈みになったルークの、ガイを握る手にまた力が入る。ヒィ、と喉の奥から搾り出したような声を出してガイが抗うが、 急所を握られているため力が入らず、簡単にルークの言いなりになってしまう。

「う、うう…っ」

温室育ちの坊ちゃまに好きなように身体を弄ばれ、悔しいやら情けないやら、本気でガイが泣き出すと、 そんな彼を見て反省したのか、ルークは再び痛みで萎えているガイに唇を寄せ、今度は大切な物を扱うように、そっと口に含んだ。
歯を立てないように出来る限り口を開き、唇で亀頭を包み込む。

鈴口に舌をあててちろちろと刺激すれば、ビクリとガイの身体が震えて、ペニスが強く脈打った。 散々痛い思いをしたせいだろうか、決して上手いわけではないルークの愛撫にすら反応し、勃起する己のそれに恥ずかしくなり、 両腕を交差させ火照った顔に押し付けた。

「ガイ、これ、きもちいいの?」

「っう…う…」

答えなければ何度でも問いかけてきそうな勢いのルークに、仕方なしにガイが頷いてみせると、嬉々とした表情でガイの下肢に顔を埋める。
耳を塞ぎたくなるような水音が冷ややかなルークの寝室に響いていた。早く飽きてくれ、と泣きそうな顔でガイは願うが、 新しい遊びを覚えたルークは夢中になってガイのペニスを銜え、何処で覚えてきたのか握っていた手まで動かし始めた。

奉仕させることは知っていても、自ら進んで誰かのために何かをするということを知らないはずのルークなのに、 ただの世話係、しかも男に性的な奉仕をするなんて。

「っ…ルー、ク…。…も、いいから…っ」

ルークの頭が上下する度に、彼の赤い髪がチクチクとガイの下腹部を刺激した。
やばい、とガイは内心呟く。普段なら考えられないルークの姿に、不覚にも酷い興奮を覚えていた。
射精を意識すると益々高まってくる欲求に、慌ててルークの頭を押さえるが、ルークはガッシリとガイの腰を掴んで離さない。

「る、だっ…!ルーク、る…っ…!…あ、うぁ、あっ…!!」

意図したわけではないだろうが、ずるずる唾液を啜る音がしたと同時に、敏感な先端に歯が軽く当たった。
微かな痛みに身を竦ませたはずが、びくんと身体が勝手に震え、大量の精液をルークの口内に吐き出す。

「……ガイッ、…気持ち良かった?」

抗う術はあったかもしれないが、結局の所射精してしまった罪悪感と後悔に、 放心したように天上を見詰めていると、能天気なルークの顔がひょっこりと視界に入った。

「…お前…まさか飲んだのか…?」

肯定することも否定することもせず、へへ、と得意そうに笑ったルークは、ポカンと口を開いた間抜け面のガイの額にそっと唇を落とす。 その酷く優しい口付けに不覚にも安心してしまったガイは、自分一人達してしまった後ろめたさを感じながらも意識をゆっくり手放した。



翌朝、ルークの寝室で目覚めたガイは、一糸纏わぬ姿で神を罵倒しながら窓から華麗に去っていくこととなる。







*後書き
はいやまなしおちなしいみなし!
…すみませんでした…orz