用法、用量を守って正しくお使いください。






「用法、用量を守って正しくお使いください。」












「林檎剥いた。…食べる?」

「…あぁ。…一つ貰っていいか」

ベッドに寝ている多田がそう言うと、行天はそのまま皮を剥いただけの林檎を手で掴んで寄越した。
せめて食べ易い様に切るとか出来ないのか、お前は。
歪な形の林檎を受け取ってそう思ったが、わざわざそれを言うのも面倒臭く感じ、黙ったままその林檎に噛り付く。

皮を剥く前の林檎は、綺麗な婉曲線を描いていたものだが、行天がそれにちょっと手を加えただけで、驚くことに林檎の原型は失われつつあった。 何だかこれは、皮を剥くというより、もぐ、と言った方が正しい気がする。
それでもまぁ、食えないことはないし、何より行天がそんな風に林檎を剥いてくれるなんで思わなかったので、素直に感謝することにした。

「…美味しい?」

「…ああ」

「良かった。俺、親に風邪の時看病してもらったことなくてさ。どういう風にすんのか分かんなかったから」

剥いただけの林檎に美味いも不味いも無いと思うのだが、じっと自分に注がれる視線に仕方なく掠れた声で答えれば、 あっさりと告げられたそれに、熱で浮かされた頭でそういた前にもそんな事を言っていたような…なんて考えていると 何故か布団を捲られ、汗を吸って軽く湿った上着に手をかけられて。

いや、着替えくらい自分で出来るから、と口を開きかけたが、どうやた行天の目的は多田を着がえさせることではないようだった。 上着が全て脱がされるようなことは無かったが、その代わりジャージに手を掛けられる。
嫌な予感に行天の下肢へと視線を移せば、すでにしっかり反応しているようで、おいおい、お前が元気だってこっちはまだ熱あるんだぞ、 と一応声に出して文句を言ってみたが、やはり行天はそんなことなどお構いなしに「平気平気」と何でもないことの様に言うと ずるずるジャージと下着を引き摺り下ろし、完全に脚から引き抜いて床へ落とした。

「…行天、俺汗臭いから。もう二日風呂入ってない」

「別にそんな事無いよ」

精一杯言葉で牽制してみても、行天はあっさりとそう言ってのける。
鉛のように動かない身体で抵抗しようにも、行天が見た目に反し案外力が強いことは、すでに身体で体験済みだ。

「ぎょう、…て…、ん…」

歯切れ悪くなったのは、狙ったかのように汗ばんだ熱い身体に無遠慮な行天の手がぴたりと触れてきたから。 思わず息を詰めて行天の名前を呼べば、今までに見た事のないような恍惚とした表情で口付けてくる。

いきなりの事に驚き、多田は行天の胸を押して抵抗を試みたが、行天はすっかりやる気らしく、先程床へ落としたジャージを拾い上げて ささやかな抵抗を示した多田の両腕を頭の上で一つにまとめてしまう。
これで多田はろくに身動きも出来なくなった。元からいつもの様に動けたというわけではないが、そうやって自由を拘束されてしまうと変にドキドキしてくる。

するすると自分の肌の上を好き放題動く行天の手に、じわじわ背中を上ってくるのは確実に快感という名の物だった。
幾度か行天の愛撫を受けたことのある多田の身体は、すぐにそれを思い出す。
多田の唇に触れていた行天の唇は、小さな胸を突起を掠め、腹筋を辿り、内腿を甘噛みした後、ようやくそこへやってくるのだ。









「っ…つ…、う……//」

熱のせいだろうか、身体が熱くてしかたない。
一向に触れてくれない行天に焦れるが、両手は頭の上で一つに括られているので射精することも出来ず、 掠れた声で行天の名前を名前を呼んでみても、行天は知らぬ素振りを決め込んで胸への愛撫を続行していた。
お願いだ、と思わず泣きそうな声で懇願すれば、行天は何処かうっとりしたような表情でうん?と顔を覗きこんでくる。

「どうかした?」

「ど、どうかしたって…、…分かってるんだろ…っ」

分かってるけど、多田の口から聞きたい。
尻を撫でられながらそんな事を言われると、熱で動かない頭では、もう触って欲しい、それだけしか思い浮かばず、行天が望んでいるだろう言葉がポロリと口を吐いて出た。 生理的な涙がじんわりと滲む。

「な、もう…。…触って、くれよ…!!」

「…多田、触って欲しいんだ?」

「当り前だろ…っ」

意地悪な質問に、自由にならない腕を行天の首に回し、必死にしがみ付くと行天も苦しさに小さく咽る。
ごめん意地悪しすぎた、と苦笑しつつ謝ってくる行天にいいから早く触ってくれと切羽詰ったような声でそれをねだれば、今度は素直に行天の手が多田のペニスに絡みついた。

「っん…!!」

「あれ、もう?いっちゃった?」

三擦り半とはこの事だろう。二、三度強く扱かれると、多田は堪らず行天にしがみ付いたまま呆気なく果ててしまう。

「…はー…っ…あ…ぎょうて…っ、…もう、いいから…早くしてくれ…!!」

射精を終えても止まらない欲求に戸惑いながら、早く早くと急かす姿に、行天は無言で多田の身体を反転させて奥で息づく後孔に唇を寄せた。 尻を突き出しただけの格好を強制されても抗うことなくそれを受け入れ、誘うようにゆらりと腰を揺らす。

「全然慣らしてないけど、もういいの?」

その問いにコクコクと数度頷いた多田に、それならと躊躇する事なく、多田の痴態を見てすでに勃起していたペニスを性急な仕草でズボンから取り出し、ヒクつく後ろへあてがった。
行くよ?と甘く掠れた声で呟く様に言うと、多田の喉がゴクリと上下する。これから与えられる快感に身体は疼いていた。
元々あまり性欲が強いとは言えなかった自分が、どうしてこれ程までに強く求めてしまうのか不思議で堪らなかったが、 それを愛だ恋とか、そんな感情で片付けてしまう気は無かった。分からない物は分からない。今はそれで良い気がする。



「っひ…、っあ…!」

「あ、熱、い…。アンタの中、普段よりもずっと熱いよ…っ?」

一気に根元まで挿入した行天が耳元で囁く様に言うと、小さく呻いた多田は眉を寄せて弱々しく首を振った。
焼けるように熱くて、時折ぎゅっと締め付けてくる感覚が堪らない。背中に浮かぶ汗を舐め取ると、なお強く、奥へ奥へと誘い込むような動きすら見せる。

「った、だ…っ」

「っな…んだ、よ…」

「多田…凄い色っぽくて…ドキドキして…っ、我慢、出来ない…ッ」

ど、ドキドキ…!?

それを多田が突っ込む前にいきなり激しい律動が始まった。
がくがくと身体を揺さぶられ、拘束された両腕では自身を支えることも出来ずに腰だけを高くあげたような体勢になるが、 そんな事などお構いなしに腰を強く掴まれて、前立腺の辺りを何度も行天のペニスが擦り上げる。

「っー…!」

「…た、だ…、多田…っ!」



そうして一晩発情期の様に盛った行天に付き合わされた多田だったが、翌日には嘘のように風邪がすっかりを治ってしまっていた。 その変わり、反対に行天が熱を出して寝込んでしまったのはまた別の話だ。