「 そ ん な 君 が 好 き 。 」












「まぁまぁ」

いつもの涼やかな表情でもって割り込んできたジェイドに、元々機嫌の悪かったガイが噛み付いた。

「旦那、これは俺とルークの問題だ。…悪いけど、口を挟まないでくれないか」

おやおや、とわざとらしく驚いたような表情を見せ、ジェイドが肩を竦める。
ルークは少しばかりジェイドを期待を込めた瞳で見詰めたが、ジェイドは引っ掻くだけ引っ掻いておいてあっさり引き下がったため、 ジェイドが入って来たことによって場の雰囲気がいっそう悪くなってしまった。

「じぇ、ジェイ…」

しかも、あっさり引き下がってくれたジェイドは此方に背を向けて歩き出そうとしたので、それを追いかけようとしたら、ガイに痛いくらいの力を込めて腕を捕まれ、 戸惑いの混じった表情で振り返ったお陰で、ジェイドについていく事も叶わず、しかもこの険悪なムードの中ガイと二人っきりという何とも言い難い状況に陥った。
ギリギリと腕に食い込むガイ手が、彼が怒っている事をひしひしと伝えてくれている。
家に居た時のガイは、こんな風に感情をハッキリと表に出す事なんてほとんど無くて、まして腕をこれほどまでに強い力で掴まれた事だって無かった。

最近のガイは何かおかしい。
ピリピリと痛いくらいの尖った空気が彼を纏い、少しでもそれに触れるとこうやって急に怒り出し、かと思えば、何か物言いたげな瞳でじっと此方を見てくるのだ。
どうかしたんだろうか。何かあったのか。
昔のガイにならそうやって軽い気持ちで聞いたのかもしれないが、今のガイにそれを言うとどうなってしまうのか分からないし、 ルークもわざわざ地雷を踏むような真似はしたくなかったので、ガイに掴まれた箇所を気にしながらも、「ここに居ろよ」という言葉に大人しく従う事にした。

「………が、ガイ…?」

「…………」

「…ええと…」

今更ながら、ジェイドが歩いていった方にちらりと視線をやってみる。
しかし残念な事に、ジェイドやアニス、ティアもナタリアも、ミュウすら居なかった。
どうしてこんな風になってしまったのか、それは多分ガイ自身も分かっていない。分かっていないから、こうやって何か言いたげな瞳で、けれど、何も言えずに居るのだ。

ギリギリと、掴んでいる腕の痛みが強くなる一方で、ガイは何も言わず、ルークも何も言えず、 もしかしなくても俺って嫌われてる?そうじゃなきゃ何か気に触るようなことをしたのだろうかと我ながらちょっと馬鹿っぽい考えがぐるぐると頭の中を駆け巡り始め、 そういった馬鹿らしい考えしか思い浮かばない自分の頭に悲しくなったのか、それともガイが掴んだ腕の痛みのせいなのか、 理由は分からなかったが、鼻の奥がツンと痛むのを感じた。
ガイが腕を放してくれないので、仕方なくそのままグスグスと鼻をすすっていると、何だか意味も無く泣けてきてしまった。

きっとジェイドが見ていたら、全く貴方はどうしてそうやっていつもすぐにベソをかくんですかなんて呆れたような声で言うだろうけれど、今は残念ながらジェイドも居ない。

どうして俺はこうも色々と上手くいかないんだろうなと水っぽい瞳を隠すように俯き、いつまでも腕を放す気配の無いガイの事を想った。