「 壁 を 蹴 っ た 、 足 が 痛 か っ た 。 甘 い 痛 み だ 。 」
"ガイ、ガイの一番好きな物ってなんだ?"
俺は勿論、「ルークに決まってるじゃないか」なんて答えが一寸の迷いも無く返ってくるものだと思っていたが、 何だか突然聞いてみたくなったので、タルタロスで移動中にガイを捕まえて聞いてみた。
すると、ガイは少しの間逡巡した後、照れたような顔を見せる。
あ、やっぱり。やや間が空いた事に不満が無いわけじゃ無かったけど、まぁこの後に続く言葉は絶対「ルーク」だろうなぁとか思ってたら、 「音機関かな…。今はこのタルタロスに興味がある」と俺の予想をはるかに超えたマニアックな答えが返ってきた。
音機関?は?馬鹿じゃねーのコイツ。
驚きに開いた口が塞がらない。
しかもガイときたらタルタロスのエンジンに使われている音機関についてベラベラと好き放題喋っているし、 俺のこの期待をどうしてくれるんだと裏切られた気持ちになった。沸々と水が沸騰するような怒りがこみ上げてくる。
俺のガイを盗るんじゃない。
嫌だ、ガイは俺のものなんだ。
ガイは俺だけ見て、俺のことだけ考えてくれていればいいんだ。
ただの機械なんかに負けてたまるか。
その機械なんかに嫉妬する俺はどうかと思ったりしなくもないけど、 だって、ガイは俺の事を一番に考えているべきだから、そんなの知らない。ガイが悪いんだ。
先程からずっと子供のように瞳を輝かせながら音機関について喋りっぱなしを一度睨むと、適当な壁に近づき、バン、と音がするほど強く蹴ってみた。
蹴破る勢いで蹴ったのに、流石軍艦、残念ながらタルタロスの壁はビクともせず、俺の足がじんじんと痛むだけに終わってしまう。
何なんだ、まじふざけんな。
「ちょ、ルーク!?お前何やってんだっ!」
「ふざけんな、こんな船壊れちまえ、ガイのばか!」
ガイは俺のもんなんだ!!
俺は未だに痛む足を抱えながら、心の奥底から叫んだ。
そして飛んできたジェイドの鉄拳によって俺は足だけではなく頭まで痛めることになった。
ガイは多分理由が分かってないんだろう、眉を八の字にして情けない表情で「どうしたんだよ」と俺の周りをうろうろしている。
お前が悪いんだ、と心の中だけで呟いたつもりだったけれど、どうやらそれはしっかり口に出ていたようで、 パチパチと瞬きしたガイが「え、俺?」と首を傾げた。
俺はそうだよお前が全部悪いんだガイのばかなんて言えず、グチグチと嫌味攻撃を続けるジェイドをかわしながら 痛む頭を抑えて小さく首を振るのが精一杯だった。