※注意※
短髪ルーク→ジェイド→長髪ルークという関係の話になっています。
ジェイドにとってのルークはあの頃の我が侭な彼なんです。
みっともないほど、彼は愛に飢え、嘆いていた
愛して、と縋りつく彼に
私は眉一つピクリと動かす事無く
身じろぎすらせず
ただただ無表情で見下ろすだけだった
愛してくれと泣いた彼の崩れ落ちるその姿は
やはりあの頃の彼と違っていて
漠然と私は、あの頃の彼のカタチを思い描いていた。
「あの頃の彼がとても好きだった。」
ごめん、と肩を落として泣きそうな表情で謝る彼を尻目に、あえてジェイドはそれを無視していた。
ジェイドの忠告を聞かず、一人先走ってしまった事から起こった事だったので、悪いのはルークのはずだった。
それでも、元々ルークに甘いガイが、その、ジェイドの姿勢を咎めるのは当り前だったのだが、 アニスやティアも参戦するのでジェイドも今日はすっかりやる気が削がれてしまっていた。
髪を切る前の彼であったら、今のように素直に謝る事だって無かっただろう。
いや、下手をすれば反対に、なんで俺が悪いんだよと逆ギレしたところだ。
そうしてガイばかりが苦笑しつつもルークの味方をし、ティアやアニス、ナタリアは「全くルークったら」と呆れたようなため息を吐くのだ。
その頃のルークが妙に懐かしく、何でも自分の思う通りにならなければ子供の様に駄々を捏ねる姿の方が、ジェイドにとってのルークだったから、
すっかりと変わってしまったルークに、内心驚、そして戸惑った。
あの時のまま、何も知らないお坊ちゃまであって欲しかったと思う。
そんな事を考えるのは間違っている。少なくとも、旅をしている仲間は、変わったルークの方により信頼を寄せている。
だが、ジェイドは違った。
ジェイドはあの、我が侭なルークに興味を持っていた。
むしろ愛していたと言っても良い。
傲慢で世間知らずな子供を、ジェイドは堪らなく愛おしく思っていたのだ。
あの長い髪の彼は一体何処へ行ってしまったのだろうか。
同じ容姿をしているくせに、彼とルークはかけ離れている存在だった。
ジェイドはルークを見ていた。否、ルークであって、ルークではない。
ルークを通して、彼を見ていた。
その事に気づかなかったルークは、何を勘違いしているのか、ジェイドに想いを寄せている。
ジェイド、と彼と同じ声色で名前を呼ぶ、それすらも煩わしい。
彼と同じ声で呼ばないでくれ、と苛立ったように言えば、ルークはきょとんとした表情で「彼って?」と首を傾げた。
「…アッシュが好きなのか?」
「何言ってるんですか、そんな訳無い」
「なら、"彼"って誰だよ?俺と同じ声って?…ジェイドは、俺が嫌いなのかよ」
「…好きですよ、愛してますよ、ルーク…私は貴方を愛していた…。いつだって…貴方を見ていたのに…」
貴方を愛していた。
なのに突然貴方は居なくなってしまった。
私の手の中から貴方のはするりと抜け出てしまった。
あるのは貴方に似た貴方の抜け殻だけ。
「ジェイド…?」
どうしてだろうか、ポロポロと伝う涙を止める事も拭う事すらも出来ずに、ジェイドは彼の名前を噛みしめるように呼んだ。
「ルー、ク…」