なんというか、七年かけて色々な事を覚えた。

歩くこと、食べること、喋ること。

覚えることに必死だったから、流れるように時間は過ぎていったけど

もう生きるために必要なことはほぼ完璧に覚えてしまったから、そうなると屋敷から出れないこの生活が、途端に暇になった。

あれ?

俺ってこれから、何をすればいいんだ?








「生きていく術しか知らない。前編」












ベッドに寝転がり、もやもやとそんな事を考え、だんだん瞼が重くなってきた頃。

コンコンと二回ノックがして「ルーク?」なんて控えめに呼ぶ声が聞こえた。

その声の持ち主はやっぱりガイで、ああ、クソ、眠いのに、とブツブツ呟きつつベッドを起き上がったルークは仕方なしにドアを開ける。

「ガイ、どうかしたか?」

欠伸をして、ルークがさもこれから寝ようとしてましたよ、なんてポーズをとれば、ガイがそれに気づかないはずもなく、

あ、悪い。もう寝るのか。じゃあおやすみ。なんて言ってさっさと行こうとしてしまう。

おいおいおい、折角起きたのになんだよそれ。

少しばかり腹がたって、イライラしたような口調で「待てよ」と腕を掴んで睨むと、何ともいえない苦笑したような顔でガイが振り向く。

その表情に癇癪を起こしそうになったルークだが、流石にもう子供ではないのだ、怒鳴るのをやめて

半ば引きずるようにしてガイを部屋に連れ込み、ベッドへ押し倒して口付けるだけに止めておいた。

どうしたんだ、今日はやけにイラついてるじゃないか。

ルークが無理矢理キスした事を咎める事もなく、ガイはむかつくくらいに落ち着いた声でそんな事を言って、そっとルークの頬に触れる。

「泣くなよ」

「泣いてなんかない」

強がって言ってみたけれども、実際ルークは何故か泣きそうで、ポンポン、と宥めるように頭を撫でてくるガイの手がいつもは鬱陶しく感じられるのに、

今日は何故か心地が良かった。

そのままガイの胸に顔擦り付けるようにして鼻を埋めれば、嗅ぎ慣れたガイの匂いがする。

香水などではない、ガイの体臭だ。

記憶を無くしてから、一番側に居たのがガイだったから、その匂いも随分嗅ぎ慣れてしまった。

ルークにとっては、その匂いが一番落ち着く匂いだった。

「ガイ…」

「何だよ、子供みたいに。…まだ子供か」

「バッ!!」

バカにすんなよ、と言うつもりで開いた口は、呆気なくガイの唇によって塞がれてしまっていた。

大人の余裕を見せ付けられ、カッとなったルークが振り上げた右手すら、難なく捕らえられる。

ああもうどうしてガイっていつもこうなんだろうすげぇムカツクとか思いながら、やっぱりそれでもキスは気持ちが良くて。

悔しいけれど、ガイは自分より大人だと思う。

たとえメイド達にちょっかいを出され、間抜けな声を上げつつ後ずさりしたり、挙句の果てに震える事しか出来なかったとしても、だ。

力や頭の良さだって、ガイの方が格段に上だし、ルークがガイに勝っている部分なんて、よくよく考えてみれば髪の長さと女に触れるくらいのものじゃないか。

悔しい。

ちっとも、面白くない。

「何だよ、キスだけでその気になっちまったのか?」

いつものように柔らかい、けれど少しだけ悪戯っぽく笑ったガイが、ゆっくりとルークのズボンの膨らみを撫でた。

それだけでビクリと震えて息を詰めたルークの目蓋に、そっとガイが口付けて。

「最近一人でしてなかったんだろ?…凄く敏感だな」

笑いを含ませたその呟きに、顔がじんわりと熱を持つ。どうしてガイはそんな恥ずかしい事ばかり言うのだ。

しかし、最近一人でしていなかったのは事実だったし、キスだけですっかり身体がその気になってしまったのも本当だったから、何も言えなかった。

恥ずかしさを誤魔化すようにガイの耳を噛むと、どうやら催促と勘違いしたであろうガイが、忍び込ませた手でルーク自身を軽く握り締める。

それだけで、本当にビックリするほど気持ちが良かった。

「もっと…」

そんな緩慢な愛撫でなくて、もっとちゃんと触ってほしかったから、ガイの手に押しつけるようにして腰をくねらす。

ギシリとベッドの軋む音と、ぐるり、と視界が反転したと思ったら、いつの間にか押し倒していたはずのガイに押し倒されていて、

あれどうしてこんな事になんて思う余裕も無く、再び口付けられてしまい、あっと言う間にルークはそのキスに夢中になった。

ガイのキスは好きだ。

ガイのキスは、甘くて、優しくて、胸がドキドキして、いつだって夢中になってしまう。

第一、ルークはガイ以外の人とキスをした事が無かったのだが。

けれど、多分恐らく、ガイはキスが上手いんだと思う。女嫌いのくせに、一体どこでそんな技を身につけたのかは不明だ。

「ん、んん…ふ…っ」

スルリと上着を脱がされ、ズボンも下着と一緒にずり下ろされた。

恥ずかしいと思う暇も無い。

黒のインナー一つだと、裸の時よりも恥ずかしいのは何故だろうか。

そんな事を思っていると、ふいにガイと目が合う。

優しく目を細めるガイに、一瞬ドキリと胸が高まる。

咄嗟に顔を背けると、真っ白なシーツが目に飛び込んできて、まるでルークの心を読み取ってしまったかのようにガイがくすくすと笑った。

恥ずかしい。

むかつく、すげぇムカツク。

なのに、ガイとのセックスは恥ずかしいけれど気持ちが良いから、嫌いではない。いや、どちらかと言うと好きだ。

インナーの上から乳首がある辺りをゆっくり舐められると、そこだけがツンと尖っていやらしい。

けれど、余計興奮してしまうのも事実だった。

「ガイ…ッ、な、なぁ…」

「分かってるよ、ご主人サマ。…でも、明日ヴァン様との稽古だろ?あんまりすると明日の稽古に響くぞ」

本当に親切心から言っているのか、それともルークを焦らしているのか。

今更そんな事を言われても、止められるわけもない。

いいからさっさとやれよ、と泣きそうになりながらも睨めば、ガイが苦笑して宥めるように勃ちあがったルークを口に含んだ。

イキナリの刺激に、ビクリと腰が独りでに跳ね上がる。

口に入りきらない部分を手で扱きながら、先端をねっとりと舐め上げ、時折強く吸われると、快感に涙が出た。

「あ、あ…、駄目だ、って…!!ガ、イ…ッ!!」

叫ぶようにガイの名前を呼ぶ。

無意識にガイの頭を抱え、もっともっと、と発情期の犬のように腰を振って啼いた。

一人でするそれとは段違いの快感。

元々ルークはこらえ性では無い方だから、今日もすぐに限界が来て、切羽詰ったような声をあげてガイの髪を引っ張ると、先端に軽く歯をたてられた。

鼻にかかった様な声を上げて、背筋を逸らしながら白濁した液体をガイの口内にぶちまけて。

ビク、ビクと断続的に腰が震え、射精の後の倦怠感がルークの腰を包み込む。

「ん、ガイ…」

甘えるようにガイの首に腕を絡ませ、身体をもっと密着させれば、ガイがまた子供みたいに、と笑った。

いつだったか、ガイが男同士でもセックス出来るという事を教えてくれたけれど、ルークがやりたいと言ったら困ったような表情をして

お前にはまだ早いよなんて言うものだから、ならもっと大きくなったらしようという約束を交わした事を今更思い出した。







言い訳(後書き)

恐らく思いっきり長くなるので、前編後編に分ける事に…

いや、決して間に合わなかったからとかそういうわけでは…ゴホゴホ

初めてのエッチ、という事で、かなり長くなる(はず)なので、いや、ホントですよ!!(笑)