クラトスルートでのパラレルとなっております。
そういったものが嫌いな方はブラウザのバックでお帰りください。
「全てが俺に背を向けた。」
「っ…、は、ぁっ!!」
剣と剣が激しくぶつかり、花火が飛び散る。
ロイドの背後では、ジーニアスが詠唱していた。
聞き覚えのある呪文。ロックブレイクか。
詠唱を終え、ジーニアスが片手を上げたと同時に一度後ろへ下がる。
目の前に地面を突き上げ岩が出現し、それに怯むことなく切り込んだ。
再び交わる剣と剣。
いつもは背中ばかりを見詰めていたロイドと真正面から向き合い、こうやって馬鹿馬鹿しいくらい真面目な表情をして剣を交わす時はもう多分これが最後なんだという予感めいた物を感じながら、何故かそれが至極当然の事のようにすら思えた。
じんわりと浮かんでくる汗を拭う暇すら無く、荒い息を繰り返しながら、そんな自分達を何処か遠くから眺めているような不思議な感覚に囚われつつ、しっかりとロイドが突き出した剣を盾で防いだ。
といっても、ロイドは攻防を二本の剣で行い、それに比べてゼロスは剣で攻撃、盾で防御と中々忙しい。
一本より二本。本数が倍ということは強さも倍だ、と豪語したロイドには呆れたが、瞬時に攻防を切り替えることの出来る点では明らかにゼロスより有利だった。
それでなくても相手は四人。長期戦は厳しいだろう。
「―輝く御名の元、地を這う穢れし魂に裁きの光を雨と降らせん。安息に眠れ、罪深き者よ…」
ジャッジメント。
無数の光りが降り注ぐ中、再び詠唱を始めたゼロスにジーニアスも負けずと唱え始める。大丈夫、俺の方が早い。
上級魔法すら使いこなす彼の攻撃を受ける訳にはいかないと、ジーニアスに向けて放った魔法を剣で防御し、
ロイドが心配そうな表情でジーニアスを振り返る。
彼らは、そうやってお互いに助け合いながら戦っている。
少し前までは自分もそうだった。ロイドや他の仲間と助け合いながら戦ってきた。
無意識に唇を噛むと、何か物言いたげなロイドと目が合った。それに動揺してしまい、目を伏せるようにして視線を外す。
「ロイド、下がって!!」
キン、と響くジーニアスの声。
しまった、と思うより先に無数の氷粒が辺りを取り巻く。
肌を掠めていくそれに顔を顰め、しかし、気を抜くことは出来なかった。
こんな痛みなど痛みのうちに入らない。
歯を食いしばり力一杯ロイドに向けて剣を突き出した時、ふいに後頭部に激痛が走り、ガクンと膝を突いて其方を見やる。
この、リーガル!頭なんか狙わなくたっていいだろーが!
そんな憎まれ口すら叩く気になれず、ゼロス!と大きな声で名前を呼ばれロイドに目を向ける。
剣を持ち此方へ走ってくるロイドがやけにスローに感じられ、何故か笑えてきた。
どうして、と言葉に出さず唇だけで呟いた彼が酷く泣きそうな顔をしていたからかもしれない。
目を瞑ってなんかやらない。
この胸にお前の剣が突きたてられる瞬間を見届けてやるさ
お前が二度と俺を忘れる事が出来ないように
しっかりとその目に焼き付けておいてやるよ
「ゼロス!!」
「ロイ、ド…?」
飛びつくようにして抱きつかれた瞬間、これは一体どういうことなのかいまいち理解出来ず、間抜けな表情でロイドの名前を呼んだ。
胸に突き刺さるはずだった剣はすでにロイドの両手には無く、期待外れというかつまりこれで死ぬ機会をまた失ったというか、 悲しむべきなのか喜んでいいのか分からずぐちゃぐちゃになった思考回路に突如割り込んできたのは、ロイドの泣きそうな声だった。
"俺はゼロスの事を信じてなかった訳じゃない!信じてた俺を信じなかったのはお前じゃないか!!"
ああ、そうか。
全てが俺に背を向けたんじゃない。
俺が全てに背を向けたのだ。
今更すぎるその答えに、ゼロスは小さく笑って目を閉じた。
薄れゆく意識の中で、ゼロス、と泣きそうな声で呼ぶ、ロイドの声だけがやけに耳に残った。